赤い電車のあなたへ



ちなみに、男の子は近くの池に遊びに行ってる。もちろん夏樹が保護者で、今ごろは振り回されてるかな。と想像してすこし笑った。


「鞠お姉ちゃん、夏のお花摘みに行きたい!」


そんなふうに言い出したのは、活発でおてんばな8歳の明日香ちゃん。男の子と木登り勝負をしても負けないやんちゃさがある。


やっぱり明日香ちゃんには女の子の遊びは退屈かなあ。


とはいえ、わたしはお店番があるからここを離れられないんだ。それが一番の役割だから、無責任な放り出し方はしたくないし。


「ごめんね、明日香ちゃん。お姉ちゃんお店番しなきゃいけないから」


やんわり断ったつもりだけど、明日香ちゃんもなかなかしぶとい。


「じゃあ、夏樹お兄ちゃんが帰ってきたらいい?」


う~~ん、とわたしは迷った。そりゃあ子どもたちの希望を叶えてはあげたいけど、夏樹たちが出かけたのはお昼を過ぎてたから、帰ってくるのはたぶん夕方になる。


それを説明するかしまいか悩みながら、結局わたしはぺんぎん屋のレジに逃げた。


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