赤い電車のあなたへ



「わかった! それじゃあ夏草を摘みに行こっか」


わたしがそう宣言すると、女の子たちからわあっ! と歓声が上がる。


「おい鞠、何のことだ?」


夏樹は訳が分からない顔で訊いてきたから、わたしはポケットのレジのカギを問答無用で押し付けた。


「はい! 男の子が先に行ってきたから、今度は女の子の番ね。 お店番よろしく!」


澄まし顔でそう伝えて、わたしはレジから離れる。


「お……おいっ!」


夏樹から抗議の意味も含めた声が出たから、わたしは夏樹に向けてあっかんべえをして見せた。


「夏樹だってアルバイト代もらってんだから、おあいこでしょ。
それに、男は外で自由にしてていいのに、女は内に籠もって居場所を護らなきゃいけないなんて。ナンセンスで時代遅れだよ」


わたしが気炎を上げれば、話が理解出来る大きめな子どもから賛同の拍手が沸き起こる。


「鞠お姉ちゃんの言うとおりだよ! 女の子だからじっとおしとやかにしなさいって。あたしも好きに冒険したり動きたいもんね」
なんて明日香ちゃんが言い。

「うちのお母さんもどんどん山に入るし、すごいんだよ!」
と雪ちゃんが話した。



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