赤い電車のあなたへ



「おお、怖い! この分だとみんな将来妻の尻に敷かれるかかあ天下だな」


夏樹がさも恐ろしげにブルッと体を震わせ、男の子たちも彼に同意した。


「へーんだ! 女なんかに負けるもんか」


ガキ大将の勉くんが意気盛んに拳を振り上げる。そんな彼に、不敵な笑みを浮かべて同級生の真希ちゃんが手を差し出した。


「負けるなんて言う以前に、この前貸した200円返してね」


「……」


勉くんはそのまま固まって、
しばらくしてすたこらさっさと逃げ出した。


「真のオトコは過去にこだわらないのさ~」
と叫びながら。


そんな様子を見て、クスクス笑う夏樹が小憎らしい。


「夏樹! 変なことを男の子に教えないでよ」


抗議の意味も含めて従兄に言えば、知らん顔でとぼけられた。


「何のことだ? 俺知らないけど」


まったくもう! ああなると夏樹はすっとぼけて埒があかないし。すこし頭にきたわたしは、夏樹に背を向けて女の子達を誘った。


「それじゃあ、行こっか!夏草を摘んでお母さん達を喜ばせよう」



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