赤い電車のあなたへ
わたしは保護者っていう立場だけど、やっぱり女の子たちの方が朝露に詳しい。
ペンギン屋のそばにある丘を登り、草が繁茂する獣道を歩いて30分後。
灌木の間を抜けてみれば、ちいさな池があって周りにいろんな花が咲き誇ってた。
梅雨が終わると花の種類は少なくなるのに、そこではびっくりするほどの色が池や緑を彩って。それに戯れる様々な種類のチョウチョもいて、思わず見とれてしまう。
キラキラと木漏れ日が池の水面を輝かせ、泳ぐ水鳥ががあがあと鳴く。
近くにこんな場所があったなんて!と驚いた。
カエルも鳴き、セミも鳴く。気の早い秋の虫が涼やかな音色を奏でる。
さわさわと吹いた風が梢を揺らし、池の水面を波立たせた。
「ね、すごいでしょ! ここにはキツネやタヌキやシカやサルも出たりするんだよ」
教えてくれた真知子ちゃんが得意気に言った。
「本当に、すごいね!」
わたしは素直に感嘆して、真知子ちゃんに感謝をしてから夢中で花を摘んでいると、女の子のひとりが思い出したように話し出した。
「そういえば、あたし明日龍ヶ縁にお父さんと行くんだぁ」
「へえ、ピクニックにでも行くのかな?」
わたしは何気なく訊いたのだけど。
「ううん、お父さんがね“とうきょうからくるちしつちょうさ”のひとをてつだうからだって! めずらしいから美紀にも見なさいって言ってたんだ」