赤い電車のあなたへ



子ども達から意外な情報を得たわたしは、龍ヶ縁探索に胸を躍らせた。


何回来たかわからないくらい馴染みになった駅。以前はこんなに来るなんて思いもしなかったけど。


「やあ、おはよう。今日も龍太郎じいさんにかね?」


駅員さんにもすっかり名前と顔を覚えられて、制帽を軽く持ち上げた挨拶した上で訊ねられた。


「はい、龍太郎おじいさんもですけれど。もしかしたら探し人が見つかるかもしれないので」


ワクワク感を抑えきれず、口元が緩んでるのが自分でも解る。もっと気を引き締めなきゃ!


油断大敵油断大敵!


「あの……。今日この龍ヶ縁に地質調査が来るのは聞いてますか?」


念には念を入れて、確認するために駅員さんにも訊ねてみた。


「ああ、聞いてるよ。去年に続いて今年は更に詳細な調査をするみたいだな」


去年よりもっと滞在が長くなる、と聞いて胸が踊った。


なら、もしかしたらあの人。龍太さんも朝露に来るのかな?


うわあ、どうしよう。なんだかドキドキしてきた。


「あ、ありがとうございました」


わたしは駅員さんにぺこりと頭を下げ、龍ヶ縁に向かって歩き出した。



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