赤い電車のあなたへ



でも、一度は大人しくなったと思われたトロロだけど、龍治さんから離れた途端にまたわたしに飛びかかってきた。


「こら、トロロ!」


龍太郎おじいさんが叱っても収まるはずもなく。キャラメルを出そうとカバン開いたわたしは、そのままトロロにのしかかられた。


「ワン! ワン!」


わたしが倒れたスキを狙ったトロロは、カバンに顔を突っ込んで紙袋を引っぱり出す。その時にカバンからいろんなものがバラバラと落ちた。


「おい、大丈夫か?」


龍治さんは何よりもまずわたしを助け起こしてくれた。それがすこし嬉しい。


「はい。ありがとうございます」


わたしが地面から体を起こす間に、龍治さんはカバンから落ちたものを拾い上げてくれた。


もちろんキャラメルはトロロに持っていかれたけど。


「あれ?」


1つの紙を広げた龍治さんが、まじまじと見てから訝しげな声を上げた。


「これ、もしかしたら龍太じゃないか?」


振り返って見れば、龍治さんが手にしていたのはわたしが描いた龍太さんの顔で。それを聞いた途端に、まさかという期待感が膨らんだ。


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