赤い電車のあなたへ



そんな事があったなんて、わたしは夢にも思わなかった。


まさか龍太さんが行方不明者になっていたなんて。


その現実にとらわれたわたしは、ある最悪の可能性に気付いてしまった。


わたしがこの3ヶ月間丹念に探してきた結果。目撃者は確かに龍ヶ縁までで、それ以降の彼の足取りはぷっつりと途切れてしまってる。


龍治さんは龍太さんを捜すためにこちらに来た、と言ってた。龍太郎おじいさんにもついでに挨拶しに来たのだと。


龍太郎おじいさんも龍太さんを心配しているらしく、やたらと龍ヶ縁の地形と滑落の可能性を口にした。


あり得ない、と誰が言えるんだろう?龍太さんが事故に遭ったかもしれない可能性を。


わたしは自分の頭から、ザアッと血の引く音が聞こえた気がした。


恥ずかしい、なんて個人的な感情で隠してる場合なんかじゃない。わたしの得てきた情報が、龍太さん失踪の何らかの手掛かりになるかもしれないんだ。


よし、とわたしは決意すると、思い切って龍治さんに話しかける。もちろん心臓はバクバクと速いし、落ち着かない気分ではあるけど。


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