赤い電車のあなたへ



「なあ、鞠ちゃん。一緒に捜さない?」


「え?」


龍治さんに一瞬何を言われたかわからず、思わず訊き返した。


「龍太捜しを手伝ってくれないかなあ? 親も親戚もダチも教授もみんな心配してるし。流石にまる1年大学を休んでんだ。俺は3年に進んだけど、あいつは2年のままなんだよな」


龍太をふつうの生活に戻す手伝いをしてくれ、なんて言われたら。協力するしかないよ。


だって、本当に彼が好きだから。幸せに暮らして欲しいと願うんだ。


こんなに心配して東京からはるばるやって来る親友もいるのに、どうして龍太さんはこちらで行方不明になったんだろう?と疑問に思う。


それはともかく。龍治さんを手伝うにしても、わたしには現実的な問題があった。


「あの……お手伝いはいいんですけど、わたしはアルバイトもしてて。だから、毎日は無理ですけど」



わたしの事情を説明すると、龍治さんはそっかと頭をかいた。


「いいよ、できる範囲で無理なくしてくれれば。俺だって無理強いするつもりは微塵もないし」


ひょうひょうとした彼の物言いに、ちょっとだけおかしくなった。



< 139 / 314 >

この作品をシェア

pagetop