赤い電車のあなたへ
わたしがあの夏の日に焼き付いた笑顔の人を捜すために、朝露にやって来て約2ヶ月。
その間もちろん捜してはみたけど、手がかりなんてまるでなかった。
ただあの時の電車が始発駅から終点まで各駅停車としか分からずに。
始発のT駅から終点のE駅まで約6時間。
途中の朝露駅は始発駅からちょうど15番目。
終点のE駅は長野県になる。
わたしもそこまで乗ったことはないんだけど。
わたし達が使うE線は割と鉄道ファンや秘境ファンに人気が高いらしいから、あの人もそんな目的で乗ったのかな?
カメラを持ったおじいさんもいたし。
7月だから来たのは夏休みの学生だったから?
ならやっぱり高校生?
大学の夏休みは遅いって聞くし。
いやいや、もしかしたらプロのカメラマンかも。
カメラはただ出してなかっただけで。
格好は青い帽子に青と赤のチェックの長袖シャツ。ズボンはかなり厚手のジーンズだったし、チラッと見えた足元はスニーカーじゃない登山靴 みたいなごつい靴だった。
シャツの上は黒いベストも着てたっけ。
荷物は背負ったナップサックと手に提げたスポーツバッグだった。
やっぱり何してるか謎だわ。