赤い電車のあなたへ
それにしても、本当に幾つかわからない。
日に焼けた幅広いがっしりした体格。
エラが張っててだんご鼻。眉は太いし目は細くって髪の毛はボサボサだったし。
全然イケメンじゃなかった。
たぶん女性に敬遠されるタイプじゃないかな。
でも、大人のようで子どもっぽい笑顔。
純粋なあたたかい笑顔。
クシャッと丸めた紙みたいな笑いじわだらけになったその顔が、わたしは大好きになった。
どうして? なんて訊かれても。ただなんとなく好きになったとしか答えようがない。
これが初恋だと知ったのは、朝露から帰ってからで。
毎晩眠れなくって、あの笑顔を思い出すたびに泣きたくなってた。
もともとなかったやる気がさらになくなって。
溜め息ばかり着いて食欲がなくなった。
痩せたわたしを心配したのがお母さん。
それまで全然仲がよくなかったのに、無理に聞き出してきたお母さんに相談したら、そうだと判明したんだ。
そして訊かれた。
“あなたはどうしたいの?”って。
わたしは考える間もなく答えた。
“もう一度あの人に会いたい”……と。