赤い電車のあなたへ



決して混同しちゃ、いけない。


夏樹への気持ちと龍太さんへの気持ちを。


恋と親愛の情は違うんだって。


似ているし限りなく近いかもしれないけど、異性への感情とは違うんだ。


「夏樹、ほたるを大切にしてあげて。わたしはそれだけが言いたくて残ったの。
わたしにとって夏樹は大好きな“お兄ちゃん”だし、夏樹にとってわたしは“手の掛かる妹”。
だけど、もうお互い一番大切な人ができた。立ち位置は変わったけど、わたしが夏樹を大好きなのは変わらないよ。
“お兄ちゃん”としてね。
だから、夏樹はほたるを最優先にしてあげて。ほたるは本当に夏樹が好きだし、わたしの大切な親友だもん」


わたしはそれだけ言うと、自分の決意がブレないうちにと立ち上がった。


「わたしからの話はそれだけ。夏樹、自分の気持ちを本当によく考えて欲しいんだ」


夏樹に向けて放った言葉だけど、それは自分自身にも当てはまるのかもしれない。


「…………」


夏樹は何も言わず、ただ壁の写真を見上げてた。


彼からのリアクションは期待してない。

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