赤い電車のあなたへ



朝露駅から約5分間電車に揺られ、東雲駅で降りる。そこから緩急ありの道をさらに徒歩で10分昇れば高校へ到着。


丘陵地が拓かれた場所に、県立朝露高校がある。


朝露川沿いに建てられてるから、グラウンドも体育館も渓流を臨める。


裏山には本当に鹿が棲んでいるらしい標高523mの小鹿山があって、更に遠くには山脈に繋がる高い山々がそびえ立ってる。


そんな大自然に恵まれた環境の朝露高校の全校生徒は、100人あまり。一学年にひとクラスしかないし、ひとクラスも生徒数は30人くらい。


だから二階建ての校舎もこじんまりとしてて。のんびりした朝露の気風を受け継いだからか、みんな仲がよく和気あいあいとしてる。


諍いはたまにあるけど、陰湿ないじめや反目はない。お互いに助け合って支えあう。


ここでは、わたしにとって居心地のいい世界が広がってた。


都会のギスギスした見て見ぬ振り、事なかれ主義日和見主義な学校とはなんていう違いだろう。


先生達も真剣にわたし達に向き合ってぶつかってくれる。親身になってくれる。


だから、わたしでも本当の思いを初めて先生に吐き出せた。



< 17 / 314 >

この作品をシェア

pagetop