赤い電車のあなたへ
7月~三日湖へ
いろんな悩みを抱えて、どれも答えを出せないまま。一睡もできずに朝を迎えた。
そういえば倹約のためにお昼はお弁当を作るんだっけ、と思い出す。
龍治さんがいろいろ金銭的に助けてくれるとは言ってても、それほど親しくないのにあんまり甘えるのもどうかと思うし。
確か昨夜のうちに下ごしらえをしたから、唐揚げと卵焼きと……あとは何を作ろうかな?
メニューを組み立てながら、わたしはまず顔を洗うために洗面所に向かう。
そして洗面所のドアを開いたら、夏樹とばったり会ってしまった。
昨日の今日だから、流石に気まずい空気が流れる。
夏樹はわたしを見てもにこりともせず、口を真一文字に引き結び眉を寄せてた。
ずいぶんと機嫌が悪そうな夏樹だから、躊躇してしまうけど。わたしは勇気をかき集め、無理やり笑顔を作って挨拶した。
「夏樹、おはよう! いい天気で良かったよね」
けど、夏樹はわたしの脇をすり抜け、フイッとその場から立ち去った。
わたしを見ようともしないで。
わたしは覚えてる限り初めて、夏樹から無視された。