赤い電車のあなたへ
わたしはショックを受け、しばらくその場に立ち尽くした。
夏樹……どうしてわたしを無視したの?
やっぱりわたしが昨夜言ったことが原因なのかな?
自分ではいっぱいいっぱいに考えて出した答えだったけど、夏樹からすれば身勝手で気に入らなかったのかな。
突き放しておいて大好き、だなんて。自分から二番目と言うだなんて。あまりにも自惚れ過ぎてたのかな。
でも、どう言い換えれば夏樹に納得してもらえたの?
昨夜の夏樹は怖かった。いつもの彼じゃなくて、知らない男の子に見えたし。わたしを抱きしめたりするなんて、いったいどういう意味かわからなかった。
夏樹は夏樹なりに真剣だったと理解してはいたけれど、じゃあいったいどう対処すれば良かったか。
あのまま話さず逃げるのはいやだったし、だからといって夏樹の言うなりになるのは怖かった。
だからわたしは自分の気持ちをはっきりと夏樹に告げて、お互いの立ち位置を確認したかった。ただそれだけで良かったのに。
夏樹は何がいやだったのかな。
わたしはとりあえず洗面所に入り、蛇口から出した水道水で顔を洗う。火照って腫れた瞼に冷たい水が気持ちいい。
鏡を見たら、やっぱりまぶたが腫れて真っ赤だった。
ひどい顔。
夏樹を傷つけた今のわたしにはお似合いだ。