赤い電車のあなたへ
ちゃんと答えなきゃいけないに違いない。
でも、ね。
やっぱりわたしは、言えないんだ。
今ここでほたるが聞いていなくても、大切な親友の前では明かせない。
けど、だからといってこの場を誤魔化す嘘をつくのも心苦しい。だから、わたしは黙りこむしかない。
わたしの様子を見た龍治さんは、チラッとほたるの方に目を向けてから、神妙な顔つきになった。
「そっか……無神経なことをごめんな。
まあ……なんだ。せっかくのプチ旅行だし、楽しく過ごさなきゃな。三日湖は泳げたりするし、釣りやボートも楽しいみたいだよ」
龍太捜しに付き合ってくれるのは嬉しいけども、まずは君たちが楽しく過ごしてほしい。龍治さんはそう話してくれた。
「そうだ! 良かったら釣りを教えてあげるよ。着いたらすぐ龍太を捜すから、午後からになるけどね」
龍治さんが一生懸命に気を使ってくれるのが解ったから、わたしはわざとらしいくらい大きな声を出し応じた。
「釣りですか。わたしは経験がないので、たぶんひどい事になると思いますけど。
それでも良ければお願いしますね」
わたしは龍治さんに自分から話しかけ、冷めた空気にならないように努めた。なぜか、ほたるがだんまりなままだったから。