赤い電車のあなたへ



なんだか気まずい空気のなか、赤い電車で3時間半かけて三日湖に着いた。


時計は11時近くを指している。


「駅員さんに龍太の事を訊くついで、念のために夏樹くんの事も訊いてみるか」


龍治さんがそう言ってくれたから、わたしも一緒に駅員さんに訊ねてみた。


三日湖は割と乗降客が多いからか、E線の中では駅も大きく駅員さんも複数いる。


全ての駅員さんに訊いてみたけど、龍太さんのことも夏樹のことも、結果として芳しくなかった。


「やっぱり夏樹くんはまだ来てないみたいだな」


龍治さんが言うように、夏樹らしき若者は見てないって。ただ、ひとりの駅員さんが龍太さんについての情報を持っていた。


「この若者なら、去年の夏ごろ女性と2人連れでいたね。ちょっと切羽詰まった感じだったし、印象に残ってる」


龍治さんが用意した龍太さんの写真を見た駅員さんがそう言った。その駅員さんによれば、女性の顔色が悪く男性に支えられてたため、駅の救護室を使うか訊ねてみた。


けど、返ってきた答えは。
“気を使っていただき、ありがとうございます。でも、これは日常にならなければいけないので。慣れるしかないんです”
そんなふうに龍太さんが言ったらしい。


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