赤い電車のあなたへ
朝露高校の正門は林の木。それをくぐり抜けて走り込むと、運動部が熱心に朝練に取り組んでた。
朝から威勢のいいかけ声がとぶ。
ちなみにほたるが所属するバレー部は、朝練が週1あるかないか。なんせ今は農家にとって繁忙期らしいから。
グラウンドで目立つのは、サッカー部かな。
選手が11人ギリギリしかいないけど、どこよりも真剣に練習に取り組んでる。
その姿を横目にわたし達がグラウンドを横切れば、練習中なのに声が飛んできた。
「おい、清川! 清川!!」
「どっちの清川よ! ちゃんと名前を呼んだら?」
腰に手を当ててほたるが軽く睨む先に、汗だくな同級生の高山くんがいた。
「悪い! 鞠の方だ」
高山くんは半袖シャツの袖口で汗を拭いながら、わたしに駆け寄ってきた。
わたしは思わず半歩後ろに下がろうとして。それは失礼でしょう、と自分を叱りつけ歯を食いしばった。
引きつらないように気をつけながら、口の端を上げ笑おうと努める。
「な……なに?」
「ごめん、あれあるかな?」
あれ?
何のことだっけと一瞬本気で考えて、すぐに思い出した。