赤い電車のあなたへ



わたしは取り出しかけたお弁当をまたカバンにしまい、ほたるに頷いた。


「わかった! わたしも付き合うね」


「え、でも。鞠こそ旅行楽しみにしてたじゃない」


ほたるは自分だけ待つつもりでいたらしく、困惑した様子だった。


「いいって! わたしもさ、夏樹のことは気になってたから。それに1人で回ってもつまらないし……気にしない!」


わたしたち友達でしょ!とは言えなかった。昨夜わたしと夏樹の間にあった出来事の後ろめたさが尾を引いてて。


夏樹がいなくなった原因が自分にあるかと思うと、罪悪感からほたるに付き合うしかないって思う。


ほたると夏樹の様子が気になって仕方ない。どうして、こんなことになっちゃったんだろ?


せっかくの楽しい旅行のはずが、後ろめたさと罪悪感でちっとも楽しめない。


わたしはあのまま夏樹を受け入れるべきだったの?それで全てうまくいった?


いいえ、それはない。


わたしが好きなのは龍太さんだから。そんないい加減な気持ちで、夏樹に応えられる訳がないんだ。


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