赤い電車のあなたへ



「それなら、鞠は龍太さんを捜しなよ」


ほたるが意外な提案をしてきた。


「あたしは夏樹を待つ、鞠は龍太さんを捜す。
お互いに大切な人のために動こうよ。
あんたはこの4ヶ月ずっと龍太さん探しをしてきたじゃん。
ここが大一番なんだからさ、一番大切なことを優先した方がいい。
あんたがどれだけ頑張ってきたかあたしは知ってるから。
だから、いきなよ」


ほたるはそう言ってにっこり笑い、わたしの肩をポンと叩いた。


「夏樹のことはあたしに任せて。もしもあんたとの間に何かあっても……あたしは鞠を信じるよ。
だって友達だし。本当に何かあったなら、あんたは今日の旅行に来なかったはず。
だから、あんまり気を張らなくていいよ」


ほたるがそんな事を言ってくれるなんて予想外で、わたしはなんだか胸がいっぱいになった。


確かにわたしが万一夏樹を受け入れてたなら、きっと後ろめたくてほたるの顔を見ることは出来なかった。


ほたると会えたのは、自分の意志できっぱりと夏樹を拒んだからだ。


わたしは疚しく思う気持ちはない。だって、わたしは夏樹にはっきりと自分の気持ちを伝え拒んだのだから。


だからほたるが望むなら、きちんと自分の気持ちを伝えたいと思う。



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