赤い電車のあなたへ



わたしは躊躇いを捨てて、ほたるに必要なことを告げた。


「うん、ありがとうほたる。
今すぐは話せないけど……わたしが好きなのは龍太さんだし、夏樹は幼なじみのいとこ。
確かにわたしは夏樹が大好きだけど、あくまでも“お兄ちゃん”なんだ。
それは何があっても変わらないし、夏樹にもきちんと伝えたから」


どんな場面でどんなふうに伝えたか、はさすがにまだ話せない。いくら信用してくれていても、あんな出来事があってはほたるだって気分がよくないだろうし。


話していい部分といけない部分というものがある、とわたしはたくさんの人と触れあう内に学んだ。


時には優しい嘘をついたり、思いやりがある誤魔化しも必要なんだ。もちろん嘘をつく行為自体は肯定すべきじゃないかもしれないけど。


なんでもかんでも見たとおり聞いたとおり、そして考えたとおりにバカ正直に話してしまえば、角が立つ事は多い。


同じ事を言っていたとしても、言い方次第でずいぶん変わるし。


キツい言葉を柔らかく言い換えたり、オブラードで包んだような言い方をしたり。逆に伝えたくても、言葉で表現するのが難しかったり。


本当に、言葉って難しい。と思う。




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