赤い電車のあなたへ



わたしは詳しい事を訊いて、なるべくメモに取るようにした。


龍太さんが働いていたのは短い間だったけれど、確かに彼はこのお店にいたという足跡を残した。


高橋さんが渡してくれたのが、龍太さんの使っていた仕事のメモ帳。短い間とはいえちゃんと仕事内容を覚えようとしたのか、びっしり細かな字で書き込みがしてある。彼らしい律儀さと真面目さだ。


龍治さんも言ってたけど、彼は融通が利かない生真面目な人らしい。なら、どうしていきなり龍ヶ縁なんかに来たんだろ?


ふざけていたら、一年も失踪したりはしないよね?


ましてや、今まで聞いてきた龍太さんの印象からすると、よほどの理由がなければ。ならば思いつめての行動、としか思えない。


じゃあ、その理由は?と想像をしてみれば。それはきっと、一緒にいた女性が鍵を握ってる。


皆さんから異口同音に“女性の体調が悪そうだった”という情報。たぶん、それは2人の行動に深く関わってくる。


高橋さんに話を聞いたあと、わたしはお礼を言ってお店を出た。


龍太さんがかつていた場所だとしみじみしたけど。それよりも、メモ書きで気になる記述を見つけ出した。


“馬姫”
それが何か高橋さんに訊くと、三日湖沿いにある神社と教えてくれた。



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