赤い電車のあなたへ



わたしはカバンを開き、しばらく探って紙包みを取り出した。そして、それを開いて高山くんに差し出す。


「はい、好きなの取っていいよ」


「お、サンキュー!」


高山くんは迷うことなく手を出したのは、一番大きな固まり。茶色いそれをパッと口に入れ、すぐに極上の笑顔になった。


「うまい! やっぱり清川のキャラメル最高にうまいな~!」


高山くんが叫ぶと、サッカー部の面々が途端に群がってきた。


「あ、高山ずるいぞ!」


「俺も食っていい?」


「ど、どうぞ!」


いつものことだから、とわたしは震える足を叱りつけ、なんとか笑顔で言えた。


「やった! サンキュー」


サッカー部の高山くんを除いた10人の手がわたしのキャラメルに伸びて……ん? 11人??


「あ~! 森田センセ、なにどさくさに紛れ食べてるんですか!」


生徒に混じってこっそりキャラメルを頬張る森田先生を、ほたるが目ざとく見つけた。


「いやあ~いつもうまそうだから……一度くらいはと思ってな」


照れからか顔を赤くして頬を掻く森田先生は、御年29歳の体育教師だったりする。


< 19 / 314 >

この作品をシェア

pagetop