赤い電車のあなたへ
わたしはカバンを開き、しばらく探って紙包みを取り出した。そして、それを開いて高山くんに差し出す。
「はい、好きなの取っていいよ」
「お、サンキュー!」
高山くんは迷うことなく手を出したのは、一番大きな固まり。茶色いそれをパッと口に入れ、すぐに極上の笑顔になった。
「うまい! やっぱり清川のキャラメル最高にうまいな~!」
高山くんが叫ぶと、サッカー部の面々が途端に群がってきた。
「あ、高山ずるいぞ!」
「俺も食っていい?」
「ど、どうぞ!」
いつものことだから、とわたしは震える足を叱りつけ、なんとか笑顔で言えた。
「やった! サンキュー」
サッカー部の高山くんを除いた10人の手がわたしのキャラメルに伸びて……ん? 11人??
「あ~! 森田センセ、なにどさくさに紛れ食べてるんですか!」
生徒に混じってこっそりキャラメルを頬張る森田先生を、ほたるが目ざとく見つけた。
「いやあ~いつもうまそうだから……一度くらいはと思ってな」
照れからか顔を赤くして頬を掻く森田先生は、御年29歳の体育教師だったりする。