赤い電車のあなたへ



馬姫神社は三日湖のメインストリートを少し外れた静かな森の中にあった。


湖周辺の賑わいとは無縁の静寂に包まれて、湖から渡る風に吹かれた梢が鳴り、小鳥がさえずる。なんだか心が落ち着いた。


わたしは特に信心深いわけじゃないから、神社やお寺になかなか縁はなくて。お盆に亡くなったお父さんのお墓参りくらいしかしなかった。初詣も行った記憶はないし。


それでも今赤い鳥居の前に立ってお社を見ると、なんだか敬虔な気持ちになれた。


ここに、龍太さんが来たのかもしれないんだ。それは不思議とすんなり納得できる。


龍太さんはこんな静かで荘厳な雰囲気が似合いそう、そう思えたからかな。


石でできた階段を上って、赤い鳥居を潜り石畳を進む。脇には水が湧き出した柄杓が置いてある水場があって、わたしは高橋さんに教えていただいた通りに手を洗い清めた。


誰かいないかな? と探してみるけど、近くの社務所や拝殿に人の姿はない。


とりあえず、龍太さんが見つかるようにお願いでもしようかな、とわたしはお財布を取り出した。



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