赤い電車のあなたへ
「もし、どうかなされましたか?」
後ろから声をかけられて振り向くと、そこには袴と単衣を着た神社の人らしき方がいた。
外見上の年齢から言ってたぶん60歳以上だと思う。ほうきを持ったその方は、穏やかな笑みをたたえていて。わたしに意外な指摘をしてきた。
「一生懸命にお参りされながら、あなたは涙を流されている。何かお困りのことでもありますか?」
えっと自分の頬に触れてみれば、確かに濡れた痕がある。
そして自分が涙を流していたんだと自覚した途端に、ポロッと大きな涙が出てきた。
ああ……わたしは泣いていたんだ。悲しかったんだ。
その感情をはっきりと理解してしまうと、もう止めようがない。ポロポロと止まらなくなった涙に困っていると、神社の方はわたしを拝殿から別の場所へ案内してくれた。
申し訳ないと思いながら着いてゆくと、お社みたいな建物の和室に通していただき、お茶まで淹れてもらえた。
しばらく休むと涙も止まったからか、神社の方がわたしに問いかけてきた。
「もしも私でよければ悩みをお聞きしましょう。口に出すことで整理しすっきりする事もありますから」