赤い電車のあなたへ
神社の方は何も答えず、しばらく静かな時間が過ぎゆく。
どうしたんだろう?やっぱり呆れてしまったのかなあ、自分本位な人間だなんて。
やっぱり口にすべきじゃなかったと半ば後悔しながら、落ち着かない気持ちで湯のみを持った。
「なるほど、なるほど。あなたは恋をなさってそれに苦しんでおられる。
その思いゆえに葛藤し、自分が身勝手な人間ではないかと考えた」
神社の方が反芻し、わたしは頷くしかない。今さら繕ってもしかたないから。
「ふむ……」
神社の方は次の言葉をさほど考えずに放ったように見えた。
「よろしいことですよ。あなたは間違っていない。
恋するゆえの苦悩や葛藤ほど複雑なものはない。そこに正解などあるはずもないからです。
もしも相手を恋い慕うあまりに害したりするならばともかく、あなたは周りの人々のこともきちんと考えて悩んでる。
その優しさを恥じることはありませんよ」
まさかと思うくらい、神社の方の声はわたしの胸に全身に染み渡った。
わたし……今のままでいてもいいの?
こんな自分本位でも許されるの?