赤い電車のあなたへ
神社の方の話は続いた。
「姫様はその絵を日々眺めて慰めとしていましたが、窶れゆく一方で。父上が呼んだどんな医師や祈祷師や薬師も手の施しようがない。
それもそのはず。
姫様は恋わずらいだったので、どんな名医も治せるはずもなく。やがて、父上は姫様が眺めている絵が妖(あやかし)で、そのせいで精気を吸い取られてはいまいか、と考えて密かに処分させようと考えた。
しかし。絵は燃やそうが斬ろうが無駄で、いくら手を加えてもかなわない。
やがて絵がない事に気付いた姫様が嘆き悲しみ、部屋から抜け出して絵を求めさまよい歩いた。
そして、姫様は父上のそばで絵を見つけた。
父上は当然絵を強硬にでも処分しようとするが、頑なに絵を守ろうとした姫様は、絵を抱えたまま川に身を投げたそうです。
しかし、川に落ちるかと思われた瞬間。姫様は光に包まれ、一頭の白い神馬の背に乗っていた。
そして、神馬は語った。
『姫が私を恋い慕う気持ちが私を呼んだ。人ならぬ身ゆえに思いを叶えることは出来ぬが、代わりにこの城に新たな豊穣を約束しよう。姫が今まで私のために流した涙だ。夜明けとともに城の東へ向かうといい』
そう予言した神馬の言に従えば、お城の東に今までなかった湖……あの三日湖が出来ていたそうです。
あの湖は姫が神馬を恋い慕う涙で出来ているという伝承なのです」
「つまりふたりは結ばれなかったんですね」
わたしはなんだかがっかりしてしまった。