赤い電車のあなたへ
「清川、また作ってきてくれな!」
高山くんが体を乗り出してリクエストしてくれた。
「あ、う……うん」
わたしが唯一得意なお菓子を褒められて、悪い気はしない。わたしを認めてくれてる、って事だから。
ほんの些細な事だけど、今まで否定されてばかりだったわたしには殊更嬉しい。
わたしのキャラメルでこれだけの人が笑顔をくれる。だから、自然とわたしからも笑みがこぼれる。
「やった! 清川のキャラメルまた食えるぞ」
「あ、ずりぃぜ高山! 俺の分も忘れんなよ」
「ぼ、僕のも!」
「オマケでいいから先生のも頼むぞ~」
森田先生までそんな事を言い、朝の学校に和やかな笑い声が上がった。
「いやぁ、モテモテですねえ~……キャラメルが、だけど」
教室に入る前、ほたるがそんな風にからかってきた。
「キャラメルが、は余分だよ!」
わたしは笑いながら、実際そうだなあなんて思う。
生まれてこの方モテたためしはないし。男子からはどちらかと言えば嫌われる方だったし。
だから、今まで恋愛沙汰なんてわたしには遠いものだった。
……あの人を見るまでは。