赤い電車のあなたへ
龍の丘は小さな温泉街、といった趣(おもむき)だった。
いくつかのホテルや旅館が建ち並び、お土産屋や飲食店もある。あまり賑わっていないけど、鄙びたここなら体を治すにはいいかもしれないな。
馬姫神社の方からも聞いた。いろんな効能がある良質な源泉があるんだよって。
だから、湯治にはいいかも。龍太さんならばきっと女性のためにここに来ているはず。
わたしは複雑な気持ちを胸の奥に押し込み、龍太さんの写真を手に方々訊き回る。
でも、皆さんからは知らないと言う答えしか出て来ない。
がっかりしながら公衆電話を見つけたから、龍治さんの携帯電話にかけようとしたのだけど。電話番号を書いたメモをなくしたのに気付いた。
れ……連絡できない……。
しかも、温泉街の一本道で猛スピードを上げる通る車を避けるのも大変で。その際に無理な動きをしたからか、足首を捻ってすごい痛みを感じた。