赤い電車のあなたへ
や、やだ。
あの人の事思い出しちゃった。
唐突にあの笑顔が浮かんで、頬が熱くなるのを感じる。あの人もキャラメル好きかな、なんてぼんやり想像しちゃったら。
「あれ? なに赤くなってんの鞠。熱でもでた?」
ほたるがわたしの顔を覗き込んできたから、慌てて否定した。
「あ……何でもない。走ったから暑いだけだよ」
下手な言い訳だけど、誤魔化すのに夢中のわたしは、ちょっとした変化に気づく余裕がなかった。
「あれ、夏樹どうかした?2年はあっちの教室でしょ」
ほたるがそんな事を言ってたから、わたしは不思議になって後ろを見てから、軽く驚いた。
夏樹がちょっと怖い……怒ったような顔をしてたから。
今まで夏樹の不機嫌そうな顔を見たことはめったになかった。なにがあっても飄々としてて、いい加減に見えて案外しっかりしてるし。
ふざけはするけど、あんまり本当の感情をおもてに出すことはないから。
だから、夏樹がわざわざわたしとほたるのあとを着いてきて、なぜ1年のクラスを睨みつけるかがわからない。