赤い電車のあなたへ
いったいどう捉えてくれるかわからないけど、龍太さんは絵を広げ、それをじっと見たままで。わたしはドキドキと胸に手を当て、うつむいたまま待っていると。
やがて、龍太さんはその絵を丁寧に丸めてわたしに手渡した。
「それは僕より君自身が持つべきものみたいだね」
そう言った龍太さんは、画用紙の裏側の汚れやシワを指先でなぞった。
「こんなに大切にしてくれた君から取り上げる訳にはいかない」
確かに、わたしが描いた龍太さんの絵は外側がボロボロだった。
わたしが毎週探すために持ち出してたし、そうじゃない日は壁に張ってた。受験中は手元に置いては眺めて励ましにしてたし。入院先でも病室の壁に張ってもらった。
その笑顔に励まされ、いつも元気を貰えた。
「ありがとう」
なんて龍太さんが言ってくれる意味がとっさに理解出来なくて。わたしが思い切って彼を見れば、そこにあったのはあの日と同じままのあったかい笑顔。
「君自身の思いも今までの行動も全て絵が語ってくれたよ。本当にずっと僕を探してくれてたんだね」
そして、もう一度繰り返した。
「ありがとう、鞠ちゃん」