赤い電車のあなたへ
朝露高の中では夏樹は比較的顔が整った方だ。今はやめてるけど、1年では運動部に入ってたから、背も高くてスラリとしてる。
そんないとこはわたしの密やかな自慢。
実際夏樹に好意を抱く女の子は少なくない。
でも、だからといってライバルを蹴落とすなんて陰湿な争いはない。
朝露の女の子は好きになっても、めったに告白なんてしない。男子も同じようで、奥手といえば奥手だけど。
だから、もしうまくいって両思いだとしても。恋人として付き合ったとしても。
都会のような“デートらしいデート”はあまりしないし、もちろん体の関係なんて簡単に持たない。
純粋に相手が大切だから、お互いにゆっくり時間をかけて仲を育んでゆく。
だから一度付き合えば簡単には別れないし、結婚する確率も高いから。朝露では簡単に告白したり付き合ったりはしない。
そんな気質だからわたしがモテる夏樹の間近にいても、嫌がらせやいじめなんてない。
街だとほんのちょっとした事でいじめられたわたしからすれば、本当に心地よい場所なんだ。