赤い電車のあなたへ
わたしはそんなふうに考えて、最悪な事に対し覚悟を持とうとした。わたしの片思いなのだと最初からわかってたし、以前からあきらめていたのだけど。
「鞠ちゃん」
いきなり龍太さんに呼ばれ、わたしはビックリした。まさかわたしの想いを解っていて、何か言われるのかと身構える。
「そんなに緊張しなくていいよ。ただ僕の事を話すだけだから」
クスッと小さく笑う龍太さんも素敵だなあ。なんて見とれてしまうわたしも、末期的症状なのかもしれない。
龍太さんがわたしに向き直ったから、へらへらしている場合じゃないとわたしは真顔になる。
彼はさっき取り出した写真を差し出してきたから、わたしは、自分が見ていいものかしばらく迷う。
龍太さんが見せてくれるから、ちゃんと見ないといけないし、写ってる人はわたしも気になる。
でも、でも。
見てしまうと自分の片思いが決定的になり、失恋してしまうかもしれない。
わたしがそれに向き合うには、きっとまだまだ時間が必要なのに。
「鞠ちゃん、君には見てほしいんだ」
龍太さんがそんなふうに言い、わたしは迷ったまま写真を手にした。