赤い電車のあなたへ



受け取った後も、わたしは写真を見る事を躊躇う。


龍太さんと女性の仲むつまじい写真だったら。男女の仲だとはっきり認識しなければならなかったら怖いし、辛い。


手が細かく震える。どくどくと鼓動がうるさいくらいだ。


でも、見なくちゃ。


見ないとわたしは前に進めない。


逃げちゃダメ。


わたしは息を飲むと、思いきって写真を裏返した。


そして、そこに写っていたのは。5人の仲がいいグループ写真。


それも高校生らしく、全員がブレザーを着ていた。


今より少しだけ幼い龍太さんや龍治さん、それから知らない男性を含めて3人が後ろに並び。

そして、女性2人が前列に座って計5人で写ってた。


どの人もはにかんだり、心からの笑顔で楽しそうだ。


「それは、高校の入学式で撮った記念写真だよ。後ろの左から、龍治と僕、それから貴史(たかし)。女の子は左が美樹(みき)で右が良子(りょうこ)」


良子……さん。


龍治さんの口から何回も聞いた名前に、わたしは思わず彼女をまじまじと見た。




派手さから言えば、隣の美樹さんの方が華やかだ。


でも、良子さんは控えめな微笑みだけど。わたしでさえ吸い込まれそうな魅力がある、と感じた。


写真からさえ惹かれる人はいるんじゃないか、と思えるほどに。

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