赤い電車のあなたへ
「俺たちは小学校から一緒の半ば幼なじみでね。何の腐れ縁か、高校を卒業するまでずっと同じクラスで。12年間ともに過ごしてきたんだ。
だから、友達とかいうよりもう家族に近い感覚があったな」
てっきり泥沼のお話かと思ったのに、龍太さんの表情は穏やかで過去を懐かしんでる。
でも、それならなぜあんな悲痛にくれた顔をしていたのだろう?
初めて見た時の龍太さんは、絶望的な重い表情をしてた。
だからこそ、笑った時との対比が鮮やかで。わたしの胸に印象付けられたのだけど。
「けど……それは僕1人の思いだったみたいで。やっぱり思春期を過ごせば男女として意識する事は自然なことなんだ」
そこで龍太さんの表情が曇りだしたから、わたしはいよいよと姿勢を正し聞く覚悟をした。
「まあ龍治は割と早くから美樹に告白して付き合ってたからね。だから……良子と貴史が惹かれあってもおかしくはなかった」
……え!?
意外な話にわたしは龍太さんを見上げて、彼の影がある寂しげな笑顔に胸が痛んだ。
「良子はずっと貴史が好きだったと、後から美樹に聞いたよ。けど……貴史は歴史ある会社の一人息子で……婚約者がいる立場だったし、しかも体が弱く病気がちだったんだ」