赤い電車のあなたへ
両想いなのに男性には婚約者がいて、周りから猛反対されてしまう。両想いの体験はないから、わたしには想像しかできないけど。
もしも幼なじみに恋をしていて……と考えたら、なぜか夏樹の顔が思い浮かんで慌てて頭を振る。夏樹とだなんて、あり得ないんだから。
けど、幼なじみの気安さとか身近さとか。家族に近いような感覚はなんとなく理解出来る。
特に血が繋がってない男女なら、恋に発展するのはごく自然な事かもしれないな。
異性として意識するのは身近な人、とほたるは言ってた。わたしは違ったけど。
でも……
周りの思惑で大切な人と引き裂かれるのは、どんなにつらい事だろう。
わたしでさえ龍太さんに逢えて幸せで、もっともっと彼の事を聞きたいと。彼の近くにいたいと思えるのに。
良子さんはどんな想いで……。
それを想像した瞬間、わたしの目の奥がツンと熱くなって、ポロッとあたたかいものがこぼれ落ちた。
すると龍太さんはふっと柔らかい表情になり、わたしの頭にポンと手を乗せた。
「ありがとう。君は良子や貴史のために泣いてくれるんだね」