赤い電車のあなたへ



わたしは龍太さんの顔を見て、切なくなった。


幼なじみで両想いの2人に挟まれ、それでも自分の思いだけは変わらないなんて。本当に叶わない片思いを、龍太さんはずっとずーっとしてきたんだ。


もう、いい。


そんな切なそうな顔をして欲しくない。
わたしはおそるおそる龍太さんの手に触れてみた。


「龍太さん……もう……いいです」


どちらにしても悲しいお話になってしまう気がして、龍太さんの傷口を抉るような事はしたくなかった。


もちろん知りたい気持ちはある。


けど、だからといって龍太さんがつらい気持ちになって欲しくない。わたしのために、その笑顔を曇らせないで。


「……ありがとう」


龍太さんはわたしの頭に置いた手を離し、お礼を言ってくれた。わたしの気持ちを掬いとってくれたのかもしれない。


それでもたった一つの気になる点だけは、どうしても訊いておきたかった。


「あの……ひとつだけ訊いてもいいでしょうか?」


「ん? 何だい」


図々しいかなと思うけれど、これだけは譲れなくて。エゴを剥き出しにしてしまう。


「龍太さんは今……どなたかと一緒に暮らしてますか?」


どなたかが異性を指すなんて誰にでも解ること。それでも訊かずにいられなかった。


けど、龍太さんはいやな顔一つせず答えてくれた。


「いや。確かに冬まで良子に付き添ってはいたが、今は1人だよ」



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