赤い電車のあなたへ



わたしが好きな人にそんな事をされたら……と想像しても分かる。


龍太さんがそんな事をするなんて思えないけど、あくまでも仮の話で。わたしが龍太さんから都合のいいように扱われても……きっと従ってしまうんだと思う。


好きな人の思いに応えたい、困っているならなおさら手をさしのべたい。ましてや、ずーっと好きだった相手なんだから。無条件で助けたくなる。


自分がどんなに傷ついても、きっとその人の幸せのために最大限の尽力をするだろうな。


わたしだって、同じだから。


わたしは龍太さんの切ない思いを想像して、止めようとした涙がまた溢れてきた。


龍太さんがどんなに深く傷ついたか、と思っただけで胸が疼き切なくなる。ポロポロとこぼれる涙を見せたくなくて、うつむいて手のひらで拭った。


なんだか龍太さんの思いには入り込む隙がないように思え、彼にどんな言葉を掛けていいのか迷う。


下手に同情的な事を言ってしまっては、彼の自尊心を傷つけはしないかという危惧があった。



< 230 / 314 >

この作品をシェア

pagetop