赤い電車のあなたへ
でも、それでも。
わたしは龍太さんに笑っていて欲しい。
わたしは自分がどうしたいのか? と自身に訊ねて、そんな答えを導き出した。
龍太さんにはいつもいつも笑っていて欲しい。幸せでいて欲しい。
だから、わたしは。もう彼の過去を問わないと決めた。
わたしが知ってもどうしようもないのだし、どうせ考えるならこれからのことで悩みたい。
つらい思いをした龍太さんだもん。これからは幸せにならなくちゃいけないんだ、とわたしは思う。
そう、もしも出来るならわたしがそばにいて彼の傷を癒やす手伝いを……なんて想像をしてしまい、恥ずかしくて1人で顔が熱くなった。
「鞠ちゃん?」
龍太さんに名前を呼ばれて、自分が挙動不審ではなかったかと慌てた。
「あっ……あの! 今日はまだお仕事ありますか?」
わたしが訊くと、龍太さんは肩を竦める。
「いや、今日は午後から休診と言った通りに、これからフリーだよ」
なら……誘っても大丈夫かな?
もう心臓がバクンバクン言って、身体中から汗が流れる。
あ~神さま!
深呼吸をしたあと、わたしは祈るような気持ちでそのひと言を口にした。
「あのっ……なら。三日湖に行きませんか?」