赤い電車のあなたへ
誘ってしまった手前、わたしはもう審判を待つ罪人のよう。心臓がうるさくて、そわそわと落ち着かない。
うわあ!よく考えたら、いきなり誘うのも図々しいよね?
ならば、とわたしは慌てて別の理由を付け足した。
「あのっ……龍治さんも来てますから。姿を見せればきっと安心すると思います」
うん、これでいい。わたしだけの都合で誘うよりは、自然な理由になったよね?
「龍治が三日湖に来てるのか……」
龍太さんはわたしの方を見ずに呟いて、参ったなあと言わんばかりに頭をガシガシと掻く。
「あいつも怒ってるだろうな。何も言わずに出てきたから」
「……いえ。怒ってる風には見えませんでした。むしろ心配してましたよ」
わたしはそんな風に龍治さんの様子を伝えた。
本当に怒ってるんだったら、とうに愛想を尽かしてると思うけど。龍治さんはこの土地に来てまで自ら捜してる。だから、彼が龍太さんを見捨てたりはしていないんだ。
「ありがとう。君に言ってもらえて良かった」
龍太さんはわたしにお礼を言い、にっこりと笑う。そのたびにドキドキとときめいて幸せな気分になる。
「というわけです、多香子さん。午後から旧友に会ってきます」
龍太さんがなぜか声を張り上げると、スライド式のドアが開いて多香子さんが顔を覗かせた。
「あら、その理由なら仕方ないから行ってらっしゃーい」
多香子さんは平然と言うけど……まさか盗み聞きしてましたか?
全てを聞かれていたと思っただけで、その場から消えたくなるほど恥ずかしくて仕方なかった。