赤い電車のあなたへ





まだドクドクいってる胸を押さえて、わたしは「信じられないや」とつぶやいた。


夢にまで見た龍太さんをわたしがこうして待ってる、だなんて。いったいどんな奇跡が起きたのか、と自分でもその巡り合わせの不思議を思う。


去年の夏から一年間ずっとずーっと憧れてきて、初恋なんだって知って。それでも龍太さんがわたしを知るはずがないから、片思いなんだと悲しくなった。


それでも、会えたらと思って探し続けてきた。


ほたるの誘いに乗って、三日湖に来てよかった。


でなきゃまだ龍太さんを捜していたし、貴重な手掛かりを見失ったかもしれないから。


いろいろと考えているうちに、龍太さんがこの龍の丘でひとりなんだと思い出す。


一緒にいた女性は何らかの望みを果たしたために、龍太さんから離れたけど。彼はいわば隠れ蓑にされたのかな。


それが強制されたのでなく彼自身望んだことなのだ、と神社の絵馬を思い出す。


嫌々ならあんなふうに絵馬を奉納したりしないはず。
それほどそのひとが大切なの? とチクチク胸が痛む。

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