赤い電車のあなたへ





龍太さんが乗ってきた自転車は、籠も荷台もある婦人用で。


「ちょっと恥ずかしいかもしれないけど、気をつけて乗ってね」


龍太さんは荷台に座布団をくくりつけ、わたしに後ろに座って、と促した。


ドキドキドキドキ。


龍太さんが自転車に乗ってから、わたしは後ろの荷台に腰を下ろす。


「こっちに手を回していいから。でないと落っこちるよ」


龍太さんは自分の腰を叩いてそう言ってくれたから、わたしは恐る恐る彼の体に腕を回した。


あ~~なんだか心臓が壊れそうだよ。こんなに心拍数が上がっりっぱなしだと、死んじゃわないかと半ば本気で心配になる。


龍太さんのがっしりした男性らしい筋肉質な体つきを、イヤでも感じて意識してしまう。


「それじゃあ、漕ぐから。しっかり掴まっててくれよ」


「あ……はい」


龍太さんに声を掛けられ、とっさに返事をしてから気付いた。


なんだか自然に話しかけてくれたんだ……って。


今まではちょっと他人行儀な話し方だったりしたけど、今は友達や知り合いに近い声かけをした、そんな感じで。


わたしはなんだか嬉しくなってしまう。



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