赤い電車のあなたへ


それから龍治さんが美樹さんとの仲の良さや、みんなとの思い出を話してくれた。


前もって龍太さんに話を聞いていることもあり、すんなり頭に入り理解できる。


小学校に入ってすぐ仲良くなった5人。


わんぱく盛りだった龍治さん、物静かで本の虫の貴史さん、穏やかで優しい龍太さん、はかなげでおとなしめな良子さん、活発で気が強い美樹さん。


貴史さんが同級生に体の弱さをからかわれた時、龍治さんと美樹さんが助けたのが始まりだとか。


龍治さんは腕っぷしで、美樹さんは達者な口で相手を黙らせたらしい。


「思えば美樹はあの時から口げんかに強かった。だから全然かなわないんだよな」


そんなふうに龍治さんが嘆く。でもどこか楽しげだ。

やっぱりなんだかんだ言って、幼なじみとの思い出は懐かしいもんね、とわたしは心の中で頷く。


それからも龍治さんはどんどん5人でのエピソードを披露してくれた。


小学校でどうしても泳げない貴史さんを連れ、こっそり川で特訓したこと。

森の中の秘密基地。


盆踊りでポカをやらかして仲良く叱られたこと。


秋はどんぐりや栗を拾ったり。


熱を出した貴史さんに積もった雪を見せるため、龍太さんが背負って3キロ歩いたこと。


美樹さんの破壊的な料理は小学校の頃に完成したこと。


良子さんが案外頑固で、どうしても花を摘めないと泣いたこと。


生き生きとした語り口から、5人の日常が目に浮かびそうなくらいだった。


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