赤い電車のあなたへ



小学校入学して以来の14年の歴史の積み重ねは、本当に強くて厚い絆があるんだと思えた。


それは同時に龍太さんの良子さんへの想いの積み重ねとなって、わたしには到底敵わない長さの時間を共有している。

それは理解していたつもりでも、良子さんのエピソードを聞くたびにすこしつらかった。


でも……。


良子さんの人となりが解る出来事を聞いていくたびに、わたしはおかしなズレを感じた。


龍太さんや龍治さんから語られるエピソードでは、良子さんは勝手な性格じゃない。むしろ周りに気を使いすぎて自分を主張できないタイプに思えた。


たとえば、小3のお誕生日会のとき。
事前に用意してあったアイスクリームが4つしかなくて、それを知っていた良子さんが自分は腹痛を装ってまで我慢し、みんなに食べさせたらしい。


このエピソードが象徴するように、良子さんは我慢強くて優しい。思いやりある人っていう印象しか受けない。


なら、どうして?
そんな人がどうして家出の時に龍太さんを巻き込むようなことをしたんだろう?


わたしはやっぱりそれが理解出来ない。



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