赤い電車のあなたへ



話は尽きなかったけど、お弁当が無くなったことで一度終わった。


しばらくロビーでゆっくりしてたけど、時間が時間だから一度旅館にチェックインしなきゃということになった。


そこでなにを企んだか、龍治さんがニヤリと笑ったのを見てしまった。


「チェックインは俺に任せてくれよ。君たちはロビーにいてくれ」


「え、でもお」


ほたるが龍治さんに突っ込んだ。


「宿泊客は住所も書く必要があるんじゃないですか? 龍治さんはあたし達の住所知りませんよね?」


「あ……あそう言えばそうだったね」


龍治さんの慌てぶりは何か怪しいけど、今のところなんともないし。そっとしておこう。


「鞠、足が悪いなら俺が書いてこようか?」


夏樹がわたしを気遣ってくれたし、ようやく旅行を認めてくれたから安心した。


「あ、わたし自分で書くね」


「なら、龍太はちゃんと鞠ちゃんを支えないとな。ほら、彼女はケガをしてるんだろ? 悪化させちゃダメじゃないか」


龍治さんがやたらと龍太さんをせかすから、じゃないだろうけど。龍太さんは立ち上がったわたしを支えてくれた。


「確かに足を庇っても悪化してしまう。僕に掴まって。一緒に行こう」


「あ……はい」


ドキドキドキドキ。


思いがけない出来事に、わたしの心臓は壊れそうなくらい高鳴った。



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