赤い電車のあなたへ
「は?」
今度は夏樹が声を上げる番だった。
そして、ほたるの発言をゆっくり理解したらしい彼は、顔色が変わる。
青くなったかと思えば真っ赤になって。
「ばっ……! おまえ、いきなり何を言い出すんだよ! 男女が相部屋なんて出来るわけないだろ」
「え~! だってふた部屋しか取れてないのに……鞠は龍太さんと同じ部屋でしょう? なら夏樹はあたしに外で寝ろって言うの!?」
「そんな事を言ってねえだろ。だいたい鞠とおまえ、俺と龍治さんで部屋割りしてたろ。その通りにすりゃ問題ないじゃないか」
夏樹の言うことも一理あるし、わたしは話の流れから気になったことを口にした。
「あの……龍治さんは龍太さんに泊まることを勧めてますけど、龍治さん自身はどうするんですか?」
そりゃあ龍太さんと過ごせるのは嬉しいけど、そのために誰かに負担を強いるのは本意じゃない。だから、そのことを含めて訊ねてみた。
「ああ、それなら平気だよ。実は旅館に物置部屋を貸してもらえたから」
龍治さんは笑顔でそんなふうに言うから、わたしはいたたまれなくてとっさに申し出る。
「そんな……ならわたしが物置部屋で寝ます!」
「い、いやいいよ! そんなつもりで言った訳じゃないから」
わたし達がそんなふうに言ってる間、ほたると夏樹もまだ揉めてた。すると、龍太さんが取りなすように発言をする。
「もう、止めないか? 旅館の方が困り果ててるだろ。
僕が鞠ちゃんをアパートに泊める。それでいいかな」