赤い電車のあなたへ



そんなこんなで、龍太さんが同じお部屋に泊まると決まってしまった。


ほたると夏樹も同じお部屋になったけど、今のわたしは自分でいっぱいいっぱい。とても親友の方まで気が回らない。


「へえ、初めて入ったけど割といい部屋だね」


ふたり部屋の和室で龍太さんがいる。彼と2人っきり。こんなシチュエーションなんてわずか半日前は想像もできなかった。


足を捻ったわたしは龍太さんに支えられていて、心臓がバクバクと賑やかで。


「疲れた? あっちの椅子に座るかい?」


窓際のテーブルと椅子を指して訊かれ、わたしは無言でこくこくと頷いた。


龍太さんに手助けされ、椅子に腰かけて息をつく。


窓に近づいた龍太さんはそれを開け放し、わたしに教えてくれた。


「ほら、鞠ちゃん。こっちから三日湖が見えるよ」


運よく最上階のお部屋を取れたから、景色は期待していたけど。キラキラ輝く三日湖も青い夏の山も遠く霞む森も見える。


遠く残雪を頂く日本アルプスまで見えて、わたしは素直に感嘆した。


「すごい! きれいですね……」


「ああ……三日湖に来て半年は経つが、夏のここは初めてなんだ。こんなにきれいだったんだなあ」


龍太さんも初めて見るように見入ってる。


わたしたちはしばらく見事な景観に見惚れてた。



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