赤い電車のあなたへ



こうして黙って一緒にいるだけなのに、なんだか居心地がいい。


日だまりのなかでお布団にくるまってるか、ゆらゆらとお湯のなかにたゆたっているみたい。


なぜだろう? とっても安心できる。


わたしが彼を好きだから?


それとも、彼が持つ空気がそう思わせるのかな。


この土地で思いがけない再会をしてから、彼にはハラハラしたりしない。

ドキドキはしょっちゅうするけれど、それは彼が好きでたまらないから。


予想外の行動を取っても、龍太さんなら安心だし安全だって信頼出来る。


夏樹みたいに危険なハラハラを体験してしまうと、わたしには龍太さんの持つ安定した空気がとっても気持ちいい。彼は大人なんだって、言動の端々から感じた。


でもそれは……


わたしが子どもだっていう現実が浮かび上がってくる事なんだけど。


こうして付き合ってくださるのはわたしに同情して? なんて、少しいじけた考え方をしてしまう。


そりゃあ、写真で見た中学生の良子さんより今のわたしはずいぶん子どもですけどね。


でも、いつかはきっと大人っぽくなって良子さんよりキレイになる……は自信がない。もともとの素材がダメだし。


龍太さんが何もしないと暗に含んだ承諾をしたのも、わたしを異性として意識した訳じゃないから、なんて安心しながらもちょっと残念な乙女心。



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