赤い電車のあなたへ



「そうだ、そう言えば」


景色を観ていた龍太さんがふと思い出したように言った。


「ここの旅館から近い場所にね、意外な穴場があるんだ。僕が見つけたのもつい最近だから、あまり知られてないと思う。みんなには内緒でこっそり行ってみようか?」


意外や意外にも龍太さんは人差し指を口に当ててウインクをするなんて、イタズラっぽい顔をした。


彼はこんな顔もするんだな、と思ったわたしの鼓動はかなりMAXに近い。



彼の新しい顔を見つけるたびに心臓がおかしくなるし、呼吸さえ思い通りにできない。


このまま龍太さんと一緒にいて大丈夫かな? と半ば本気で心配になった。


「はい……龍太さんが良ければ見に行きたいです」


「よし、それじゃ決まりだな」


龍太さんはそう言って立ち上がると、龍治さんが届けてくれたリュックを開いた。


わたしが初めて彼を見た時にも身につけていた、濃いグリーンの丈夫そうなリュックだ。


その中から懐中電灯と袋を取り出し、彼は自然とわたしに体を寄せた。



「はい、寄りかかって。足を悪くするわけにはいかないからね」


そんな小さな思いやりが嬉しくて、わたしは遠慮がちながら彼に寄りかかった。


「でも、龍太さんは大丈夫なんですか?」


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