赤い電車のあなたへ
龍太さんはわたしが示した場所にビニールシートを敷いてくれる。
「いっぱいに広げた方がいいかな?」
「あっ……あの! 手伝います」
龍太さんにだけやらせてしまうのは心苦しいから申し出たのだけど、龍太さんは手のひらでわたしの動きを遮った。
「いいよ。さっきから言ってるよね? 足が悪くなっちゃうよって……足のケガは軽くても馬鹿にしちゃいけない。どんどん悪化させればそれだけ治りが遅くなる。
でも、気遣ってくれたことは嬉しい。ありがとう」
龍太さんはわたしの頭をポンポンと軽く叩いて笑う。
理解してくれたんだ、わたしの気持ちを。とジンと胸に来たあったかさで涙が出そうになる。
龍太さんがビニールシートを敷き終わり、それからわたしに寝そべるように促すけど、わたしは自分よりも先に龍太さんに見て欲しかった。
「龍太さん、先にあお向けに寝ころんでみてください。鷺草のそばに頭がくる感じで」
「え、僕が先でいいのかい?」
「はい。龍太さんに先に見て貰いたいんです」
わたしが頷くと、龍太さんはふっと口元を緩めてこう言った。
「なら、一緒に寝そべってみよう。それなら問題ないだろう?」