赤い電車のあなたへ



……え?


わたしは龍太さんの言うことが理解出来ず、高い位置にある彼の顔を見上げた。


たぶん、わたしはポカンと間が抜けた顔をしていたと思う。
龍太さんが苦笑いして、後ろ頭を掻いたから。


「ごめん……いきなり図々しかったね。知らない男にそんなふうに言われたら、なに言ってんだって思うのが当然だよ」


龍太さんの声のトーンがすこしだけ低くなり、力強さも減ったような気がして。わたしは慌てて彼のシャツを握りしめた。


「そっ……そんなことないです! 龍太さんは知らない人じゃないですし、図々しいとか思いません!」


そりゃあ龍太さんからそんなことを言ってもらえた時は、理解し難くてついつい鈍い反応しかできなかったけど。それだけ龍太さんが打ち解けてくれたことが嬉しい。


「いっ……一緒に……横になりましょう!」


勇気をかき集めて、それでも大胆なことを言ったと頬が熱くなる。すると、龍太さんは微笑んでわたしの頭を叩いてくれた。


「わかった、一緒にね」


龍太さんはそっとわたしの手を握りしめてくれた。


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